2016年2月15日月曜日

9つの歌曲 op.32

1864年に作曲されたこの作品集では, わが妃よ, そなたはなんとop.32-9が特に有名である. 恋をテーマとする作品が多い. 同時期の作品として, ピアノ五重奏曲op.34がある.



第1曲 私は不意に飛び起きた Wie rafft ich mich auf in der Nacht
後悔の念から, 夜中に起き出して街中をさすらう. 感情的になっている心中が, 抑制されてはいるが情熱的な調子で歌われる.

第2曲 もはや君の許には行くまい Nicht mehr zu dir zu gehen
推測だが, 死別した恋人に対する想いを詠う詩ではないか. その心中がわからず, 生きるべきか死ぬべきかを迷う重苦しい歌曲である.

第3曲 悲しくさまよい歩く Ich schleich umher
タイトル通り, 悲しみに暮れて歩き回る人の憂鬱な気分が描写される. 永遠の愛についてop.43-1を想起させる.

第4曲 私の傍を流れ去った河 Der Strom, der neben mir verrauschte
過去に恋仲であった男性のことを思い出し, 彼に会えないことを悲しむ. 随所に挿入された3/2拍子の小節が余韻を高めている.

第5曲 いまいましい, お前はそうやって私をまた Wehe, so willst du mich wieder
自分の行動を制限する環境に対する苛立ちが強い調子で表現される. 歌とピアノ低音の掛け合いが焦燥感を煽る.

第6曲 僕が思い違いをしていたと君は言う Du sprichst, dass ich mich täuschte
浮気した恋人を問い詰める. 自分の中に残った愛情や諦めからなる複雑な感情が絶妙に表現される.

第7曲 あなたはひどいことを言おうと思っているが Bitteres zu sagen denkst du
あなたはどんなに怒っていても実際に発せられるのは思いやりに満ちた優しい言葉である, と恋人に告げる歌.

第8曲 私とあの子はこんな中 So stehn wir, ich und meine Weide
ある種のすれ違い状態にある恋人(?)への思いが綴られる. 極めてシンプルな旋律, ピアノ伴奏からなるブラームスらしい作品.

第9曲 わが妃よ, そなたはなんと Wie bist du, meine Königin
ブラームスの歌曲の中でも最も有名なもののひとつ. 柔らかな雰囲気の曲で, 切々と意中の女性に思いを語る.


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