2016年1月30日土曜日

弦楽四重奏曲第1番 op.51-1

交響曲の場合と同じく, ブラームスにとって弦楽四重奏曲というジャンルはベートーヴェンを意識せずにいられないものであった. ベートーヴェンが作品を残していない弦楽六重奏のためには, 比較的早い時期にop.18とop.36という2つの傑作を残しているが, 弦楽四重奏曲を発表するのはop.51, 彼が40歳のときとかなり遅くなってからである (それでも交響曲よりは早いが). 伝えられるところによると, 現在第1番として知られているこの作品の前に, およそ20の四重奏が作曲され, 廃棄されている. その厳しい自己批判を通り抜けただけあって, この第1番と, 同時に発表された第2番は, 高い完成度と充実した内容を誇っている. ブラームスの弦楽四重奏曲はあと1曲, 第3番op.67で完結する.

2016年1月28日木曜日

ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24

主題と25の変奏, そしてフーガからなる大規模なピアノ作品である.
本作品は, その着想の豊かさ, 規模の大きさ, 卓越した変奏技法といった点でパガニーニ変奏曲と並び称賛される.

極めて単純な主題から驚くほど多様な音楽が引き出させていく様はまさに圧巻である. 例えば第7変奏の軽快な踊りや, 第13変奏の重々しい文句, 第19変奏のシチリアーノなど. 最後のフーガ主題も, もとの変奏曲主題のバリエーションとして得られたものである.

バッハのごとき対位法や派手な跳躍が多く単純に技術的に難しいのみならず, そのような豊富な情景を描き出す必要があるため, 知名度の割に実演の機会は多くはない. そもそも変奏曲というジャンル自体, 長大な作品が多いために演奏に恵まれないのではあるが.

2016年1月26日火曜日

4つの歌曲 op.70

第1曲 海辺の庭園にて Im Garten am Seegestade
木々のざわめき, 波の打ち寄せる音, そして鳥たちの歌... 海辺の庭園を満たす音, やさしい鳥の歌で過去の実らなかった恋に思いを馳せ, 悲しみに沈む.

第2曲 ひばりの囀り Lerchengesang
愛らしいひばりの囀りを耳にして, 昔のことを思い出し感慨に耽る. ピアノ伴奏が途絶え歌唱だけとなる箇所が何か所かあり, 独特の寂寥感を醸し出している.

第3曲 セレナーデ Serenade
よく知られた歌曲のひとつで, ブラームスには数少ないゲーテの詩による作品. 悩んでいる様子の自分の子どもに対して, 手助けになりたいと優しく語りかける.

第4曲 夕立 Abendregen
前半が主人公である旅人が夕立の中を登場する情景を, 後半("Nun weiß ich"以降)が旅人の一人称で自分の頭上にかかる虹に対する想いを語る. ピアノ伴奏が地味ながらそのテクストをよく引き立てている.

2016年1月24日日曜日

食卓の歌 op.93b

ピアノ伴奏つき合唱曲で, 「女性への感謝」というサブタイトルがつけられている.
合唱の伴奏としてオルガンではなくピアノを指定している, 唯一の作品番号つきの楽曲でもあるが, これはKrefeldの合唱協会の50周年を祝うために作曲されたという経緯によるものと考えられる.
女性と男性の対話という形式を取っており, 朗らかな曲調で親しみやすい曲である.

2016年1月22日金曜日

ピアノ協奏曲第1番 op.15

本日1/22は, ピアノ協奏曲第1番ニ短調の初演からちょうど157年にあたる.
初演の5日後にライプツィヒでで作曲者自身の独奏によって行われたこの曲の演奏は, 惨憺たる大失敗に終わった. なんと, 拍手をしたのがわずか3人だけだったと伝えられる. 一旦は交響曲として作られたことに由来する協奏曲らしからぬシンフォニックな響きや, その長大さ, ソリストの技巧を披露する派手なパッセージの不足がその原因であろう.
その後のクララ・シューマンらの尽力によって, 現在ではブラームス初期の傑作としての評価が確立している.

第1楽章
ニ短調, 6/4拍子, 協奏ソナタ形式.
強烈なティンパニの連打に続き, 弦楽器によって第1主題が堂々と奏される. 第2主題を提示することなく管弦楽パートを終えると, 静かにソロが演奏に加わる. 展開部終盤での盛り上がり, そしてそこからの再現部への突入が聞き所.

第2楽章
ニ長調, 6/4拍子, 三部形式.
弦楽器とファゴットの穏やかな旋律から始まる. 独奏の扱いや管弦楽法といった点でピアノ協奏曲第2番第3楽章を思わせる.

第3楽章
ニ短調, 2/4拍子, ロンド.
古めかしいロンド主題による, 走り抜けるような爽快な楽章. 副次主題は1楽章の第2主題に似たもので, 1回目はヘ長調, 2回目はニ短調で現れる. 短いカデンツァを経てニ長調に転調すると, 輝かしく全曲を締める.

2016年1月20日水曜日

6つの歌曲 op.85

第1曲 夏の宵Sommerabend
夏の夜の草原, 小川の美しさを歌った描写的な詩. 単純な構成ながらそれが逆に印象を深めている.

第2曲 月の光Mondenschein
この先の見通しが立たないのを月の光に照らして欲しい, と願う歌詞. 中間部で第1曲の旋律が用いられている.

第3曲 娘の歌 Mädchenlied
美しい薔薇を見つけたものの, それを取ってきて見せたい相手がいない少女の心模様.
セルビアの民謡詩に基くもので, スラブ系の影響がある.

第4曲 さよなら! Ade!
今度はボヘミアの民謡詩による. 恋人2人が挨拶を交わすのに花や風が同調するというもの. 民謡調で親しみやすい.

第5曲 春の歌 Frühlingslied
ひばりのさえずり, 草木の芽に春を感じ, 年老いた自分も再び花を咲かせたいものだ, と歌う.

第6曲 森の静寂の中で In Waldeseinsamkeit
森の中で恋人と二人きりになり, えも言われぬ寂寥感に襲われる様子を歌ったもの.
歌詞, 音楽ともにその独特の感情を巧妙に描き出している.

2016年1月18日月曜日

チェロソナタ第1番 op.38

3楽章からなる作品で, 音楽に秘められた情熱や哀愁のために特に人気のある楽曲となっている.
全体に対位法を意識して作曲されており, この努力がドイツ・レクイエムとして結実することになる.

第1楽章
ホ短調, 4/4拍子, ソナタ形式.
低音のチェロがゆったりと第1主題を歌う. 長調の部分であってもどこか悲し気な音楽が魅力的.
第2楽章
イ短調, 3/4拍子, 三部形式
短調のメヌエットである. トリオは滑らかな旋律線が特徴的な嬰ヘ短調.
第3楽章
ホ短調, 4/4拍子,     フーガ.
J.S.バッハの主題に基づくフーガ. その結果, 極めて古めかしい響きの音楽となっている.

2016年1月16日土曜日

運命の女神の歌 op.89

ゲーテの古代ギリシャ神話に基づく戯曲「タウリス島のイフィゲーニエ」のテキストによる, 管弦楽伴奏つき合唱曲.
 同時期の作品にピアノ協奏曲第2番や交響曲第3番などがある.
このジャンルの作品としては最後のものであり, 哀悼の歌op.82に続くものである.
しかしながら, その力強く劇的な音楽はむしろ作品番号50番代の一連の同ジャンルの作品を想起させる.

2016年1月14日木曜日

4つの歌曲 op.46

第1曲 花の冠
知られざる名曲の一. テキストは古代ギリシャ詩をもとにしたダウマーの詩で, 片思いする若者の悲哀を詠ったもの.
柔らかなピアノで始まり, 優しく静かな歌唱が導かれる. 中間部では短調となり, 思いに沈み込むような深い音楽が展開される.
ピアノの後奏では曲の冒頭が回想され, 波が引くように曲を閉じる.

第2曲 マジャールの女
民謡調の素朴な作品. マジャール人の女性の瞳の美しさを情熱的な表現で語っている.

第3曲 忘却の水を湛えた杯
つれない女性に対する想いを忘却の泉に沈めたいと願う男性の心情を強い調子で歌う. ピアノの鋭い響きが特徴的.

第4曲 夜鶯に寄せて
ブラームスの歌曲としてよく知られた作品である. タイトルの通り, ナイチンゲール (Nachtigall) を歌う曲である.
全体のバランスが取れた聴きやすい曲で, ピアノ伴奏もシンプルながら効果的.

2016年1月12日火曜日

シューマンの主題による変奏曲 op.9

クララ・シューマンに献呈されたこの曲は, 病床のロベルト・シューマンに届けられ, 彼を喜ばせたと伝えられる.
R.シューマンの「アルブムブレッター」(作品99中の1曲)に基づく主題と16の変奏からなる.
後のヘンデル変奏曲やパガニーニ変奏曲に比べるとやや単調な嫌いがあるし, 技術的に難しい割に地味で演奏効果が上がらないために, かなりマイナーな作品となっている.
それでも, 静かに耳を傾けると, 若いブラームスの情熱や作曲にかける意気込みが秘められていることが感じられるだろう.

2016年1月10日日曜日

弦楽五重奏曲第2番 op.111

ブラームスは弦楽器だけのための室内楽作品として, 四重奏, 五重奏, 六重奏という3通りの編成の作品を残している.
これらは (少なくとも出版された作品については) 作曲時期が明確に分かれており, 前期に六重奏, 中期に四重奏, 後期の五重奏となっている.
従って, 五重奏曲第2番は, これらの一連の作品の最後のものであり, コンパクトな作品であるがそれに相応しい充実した内容を持っている.
晩年の作品らしい洗練された書法に基づくが, それにも拘わらず様々な生の喜びに満ちた朗らかな曲である.

2016年1月9日土曜日

2つのモテット op.29

モテットとは, 無伴奏の合奏のための宗教曲のことを指す.
ブラームスはこの分野にop.29, op.74, op.110の計7曲を残している.

第1曲 救いは我らのもとに
ホ長調, 短い序奏とフーガからなる.
バッハ以来の古い対位法的手法をブラームスが身に着け, それを生かして新しい主張をしようと試みているのが明らかである.
ワーグナーのヘンデル変奏曲に対する評価「古い形式でも, これを扱う術を心得た人間の手にかかると, まだ何か為し得るものだ」は,
むしろこの曲や第2曲にこそ相応しい.

第2曲 神よ、私の中に清い心を創れ
ト長調, 2/2拍子 → ト短調, 4/4拍子 → ト長調, 6/4拍子 → ト長調, 6/4拍子.
短いながらも変化に富んだ楽曲. それでいて全体としての調和や統一感は損なわれていない点に, 若きブラームスの手腕が確認できる.

2016年1月8日金曜日

大学祝典序曲 op.80

ブレスラウ大学からの名誉博士号授与に対する返礼として1880年に作曲された. 「だいしゅく」と略される.
ドイツの学生歌が4曲引用されている他, ブラームスの管弦楽作品の中で最大の編成である点が特徴.
姉妹作に悲劇的序曲op.81がある.

ハ短調, 4/4拍子→ハ長調, 4/4拍子, 自由なソナタ形式.
交響曲第1番第4楽章で採用された, 展開部と再現部を兼ね備えた「展開的再現部」が採用されている.
冒頭, 大太鼓のリズムに乗ってハ短調の第1主題が弦楽器で刻まれる. この主題はブラームス本人の創作である.
この主題に基づいて一つの山場を築き, それが落ち着いたところで管楽器によって「僕らは立派な学び舎を建てた」が高らかに奏される.
その後, ハ長調で第1主題を確保すると, やはり第1主題に基づく経過句を経て, 第2主題である「祖国の父」に辿りつく.
小結尾はファゴットのユーモラスな「あそこの山から来るのは何?」で, 全管弦楽でそれを繰り返して提示部を締める.
展開的再現部は17小節目からの繰り返しから始まるが, 直前の勢いに引っ張られて力強い音楽へと変貌する.
一旦落ち着いた後に再び盛り上がり, 3拍子の進行畳み掛けると, ハ長調での高らかな第1主題の再現となる.
手早く第2主題に移った後は提示部と同じ流れになる.ただし小結尾のファゴットは省略される.
コーダは「だから愉快にやろうじゃないか」による壮麗なもの.

2016年1月7日木曜日

スケルツォ op.4

ブラームスはその生涯を通じて, 自作の出版には極めて慎重であった.
入念な自己反省結果として破棄され, 存在が伝えられるだけで残っていない作品は数多くある.
その結果, ハンブルクで作曲された曲の大部分は破棄されたのであるが,
このスケルツォはその中で厳しい自己査定を通り抜けて出版されたものとして貴重である.
リストを訪問した際にブラームスが携えていたのもこの曲の楽譜である.

変ホ短調, 3/4拍子.
神経質な属和音で始まり, 重音の多い力強い音楽が展開される.
半音進行や低音の重視など, ブラームスの典型的様式を既に確立していることが見て取れる.
第1トリオは変ホ長調で, オクターブの重音や大きな跳躍が頻発する.
ロ長調の第2トリオで少ない素材から多様な楽想が導かれている点はマルクスゼンの影響ではないだろうか.
(動画は追記の中)

2016年1月6日水曜日

4つの四重唱曲 op.92

四重唱はブラームスの声楽作品の重要な一角を構成する. 今回紹介するのは, 特に有名な「晩秋」を含む作品92である.

第1曲 おお、美しい夜
星々のきらめきやナイチンゲールの鳴き声に囲まれて, 美への賛美が思わず歌として漏れ出したかのような音楽.


第2曲 晩秋
ホ短調, 3/4拍子.
歌詞がわからなくてもヨーロッパの田園風景が思い浮かぶような強い描写力を持つ.
霧の垂れ込める森, 小麦畑, 最盛期を過ぎた寂しげな花, ...

第3曲 夕べの歌
ヘ長調, 4/4拍子.
白昼と夜の交わる黄昏時の情感を詠った曲.4声部とピアノの対位法的絡み合いの美しさが聴きどころ.

第4曲 なぜ?
変ロ長調, 4/4拍子.
強烈なピアノの前奏に続いて, 「なぜ歌は天に向かって響き渡るのか?」と歌われる冒頭は強いインパクトを持つ.
その後音楽は落ち着き, 歌唱によって星や月の美しさ, そして神の祝福を受けた日常が一層引き立つということが静かに述べられる.
※第4曲のみ四重唱による演奏が見つからなかったので, 合唱による演奏を掲載する.

2016年1月5日火曜日

ピアノ三重奏曲第2番 op.87

円熟期の作品. 同時期の作品にピアノ協奏曲第2番などがある.
3曲のピアノトリオの中で, クララ・シューマンが最も愛好したものと伝えられる.

第1楽章
ハ長調, 3/4拍子, ソナタ形式.
冒頭ヴァイオリンとチェロのユニゾンで提示される第1主題をもとに, 溌剌とした音楽が提示される.
その後, ト長調による第2主題に続き様々が楽想が立て続けに現れる様子は, 交響曲第2番の1楽章を思わせる.
展開部は, 第1主題を3人で奏でると, 弦楽器とピアノに分かれて強烈な掛け合いとなる.
それがひと段落すると, 第1主題に基づく旋律がチェロで歌われる.
再現部は第1主題部が大きく変形されている他は型通り.

第2楽章
イ短調, 2/4拍子, 変奏曲
物悲しい旋律による主題と5つの変奏からなる変奏曲. この時期に他に変奏曲形式を用いた作品がないという点は注目に値する.
第4変奏で長調かつ6/8拍子で美しい旋律が奏でられる.

第3楽章
ハ短調, 6/8拍子, スケルツォ
細かく走り回るピアノや, 弦楽器の同音の刻みが特徴的なスケルツォ. 管弦楽作品とは異なる, 私的な音楽の印象が強い.
トリオでは, ヴァイオリンとチェロのメロディの絡み合いが繰り広げられる.
初期のFAEソナタの第3楽章との類似性にも注意したい.

第4楽章
ハ長調, 4/4拍子, ソナタ形式
Fis音やDis音が強調された耳慣れない響きの第1主題は, この時期のブラームスの和声への挑戦を詳らかにする.
この努力は, 交響曲第3番として結実することになる.
音の跳躍が多い第2主題, 無窮動のような小結尾を経て, その無窮動の雰囲気が支配的な展開部へ流れ込む.
コーダでは, 第1主題によるゆったりした音楽の後に, 大きく盛り上がり第2主題, 第1主題が再現され, 朗らかに曲を結ぶ.

2016年1月4日月曜日

4つの厳粛な歌 op.121

ブラームスが発表した最後の歌曲集がこの「4つの厳粛な歌」であり, 第4曲を除いて死の前年1896年に作曲された.
親しい友人との死別を重ねたブラームスの「辞世の句」と言える.
その歌詞も死を主たるテーマとして取り扱うもので, まさに「厳粛な」という形容が相応しい.

第1曲 「人間の成り行きは」
人は動物と同じく死後は塵に還る, という虚無的な旧約聖書のテクストによる.
単純な音型の繰り返しを主としており一見極めて単純な楽譜に思えるが, 熟練の技により絶妙な情感が醸し出されている.

第2曲 「わたしは顔を向けて見た」
現世を嘆き, それに直面していないまだ生まれぬ者を羨むという厭世的な歌詞.
第1曲と同じく, 長年の経験の総決算とも言える作曲技巧が単純な譜面に結実している.

第3曲 「おお死よ, なんと苦々しいものか」
恵まれた者にとって死は苦痛であるが, そうでない者にとってはむしろ喜ばしいものである, という歌詞.
弱者にとっての死が, 長調に転調し死を愛おしむような歌唱で表現されるのが効果的である.

第4曲 「たとえわたしが人間の言葉で」
この曲のみ1892年に作曲された. そのためか, 歌詞も新約聖書による愛の大切さを説くものである.
ピアノ左手の弱拍に置かれた低音が, 歌唱の前向きな音楽を後ろ向きに抑制している.

2016年1月3日日曜日

ハイドンの主題による変奏曲 op.56

本作品が発表されるまで, 管弦楽のための作品としては初期にピアノ協奏曲および2曲のセレナーデを発表して以来10年が経過している.

主題
木管楽器を中心として穏やかな主題が提示される.
やや変則的な5小節を単位とする旋律であるが, それに伴う不安定感は一切感じられない.

第一変奏
主題の最後の同音連打を金管楽器が反復すると, 弦楽器の流れるような旋律が零れ落ちる.

第二変奏
変ロ短調に転調する. オクターブの跳躍が目立つ弦楽器と, 付点のリズムで細かく動く管楽器の対比.

第三変奏
再び長調に戻り, 息の長いメロディが奏でられる.

第四変奏
3/8拍子でテンポを落とし, 短調の悲しい歌となる. 上昇音型のメロディと, 16音符で下降する対旋律.

第五変奏
6/8拍子の軽快な変奏. 頻繁なアウフタクトが目立つ.

第六変奏
2/4 拍子に戻り, もとの主題の旋律が再び明確に提示される. ホルンの勇壮な響きが特徴的.

第七変奏
シチリアーノのリズムによる, 間奏曲風の音楽.

第八変奏
変ロ短調の主和音が回避される結果として, 落ち着かない不気味とすら言える変奏である.

終曲
終曲は, これ自体がもとの変奏曲主題を簡略化した主題に基づくパッサカリア (変奏曲の一種)となっている.
対位法的操作が多く, 初聴ではパッサカリア主題の提示を認識するのがやや難しい.
数年後に完成される交響曲第1番に類似したパッセージがいくつか含まれるのが興味深い.
途中の短調の部分から長調に戻る際にもとの変奏曲主題も再現する.

2016年1月2日土曜日

ヴァイオリン・ソナタ第2番 op.100

交響曲第4番op.98を発表した翌年の夏, ブラームスは避暑地をミュルツツーシュラークからトゥーンへと移した.
この地で作曲されたのは3曲, チェロソナタ第2番, ヴァイオリンソナタ第2番, ピアノ三重奏曲第3番である.
このうちピアノ三重奏曲については、交響曲第4番に匹敵する重く暗い楽想を持つが,
残りの2曲は比較的明るく親しみやすい曲となっている.
本日紹介するのは, 交響曲第2番のような陽光で満たされたヴァイオリンソナタ第2番である.
全編を通して奏でられる穏やかな秋晴れの日を思わせる温かな歌は, 一聴するなり作品番号70番代の一連の作品を連想させる.

第1楽章
イ長調, 3/4拍子, ソナタ形式.
序をおかずピアノにより第一主題が提示される. メロディ自体は4小節で構成されているものの,
最後に1小節だけヴァイオリンの応答があるため, 実質的に5小節を単位としている.
ヴァイオリンによって第一主題が確保されると, ホ長調に転調しすぐに第二主題へと移る.
1小節の休止の後の展開部では, はじめ第一主題が, 次いで結尾主題が扱われる.
繊細に移ろう和声によって醸し出される独特な表情が聴きどころ.
再現部は第一主題が切り詰められているが, おおよそ型どおり.
相対的に長大なコーダでは静と動が対比される.

第2楽章
ヘ長調, 2/4拍子.
ABABAという単純な構成を持つが, 毎回変奏されるので単調さはない.
むしろ, ロンドやスケルツォ, メヌエットといった要素が巧妙に溶け込んだ巧妙な構成を持つと言えよう.
全体としてモーツァルトのような可憐さを備えた楽曲である.
AはAndante tranquilloで跳躍の多い旋律が優雅に歌われる.
Bはvivaceでピアノとヴァイオリンが軽快に楽譜の間を走りまわる.

第3楽章
イ長調, 2/2拍子, ロンド形式.
幅の広い, ゆったりとしたヴァイオリンのメロディーで始まる.
ロンド形式となっているが, この楽章のほとんどすべての要素がロンド主題から展開されたものであり,
自由な変奏曲と表現するほうが実態に近い.
途中やや暗くなることがあっても, 最初の主題の明るさを失わずに前を向いて進んでいくひたむきさが心を打つ.

2016年1月1日金曜日

ドイツ・レクイエム op.45

ラテン語の祈祷文に基づくモーツァルトやヴェルディのレクイエムとは異なり、
本作品の歌詞はドイツ語訳聖書の文言をブラームスが自由に取り出し、配列し直したものとなっている。
それ故に、実際の式典用として用いられない、純「演奏会用」のレクイエムと言える。
このジャンルには他にウォルトンの戦争レクイエムなどがある。

全体で7曲70分という大曲で、ブラームス全作品中最も規模の大きな楽曲である。
この曲の構想および作曲にはロベルト・シューマンおよびブラームスの母親クリスティーネの死が影響している。
その結果、人の悲しみ、慰め、敬虔な祈りといった感情が音楽に露骨に刻印されている。
ブラームスが交響曲を中心とする器楽作品では標題音楽と距離を取っていることを思うと、
このレクイエムはブラームスらしくないと評価されるかもしれない。
しかしながら、声楽作品ではそのような個人的動機に基づく作品も散見され、
彼の音楽の器楽とは異なった切り口を提示していると見るのが妥当であろう。
作曲技法の面では、古めかしい対位法を駆使するなど、古い音楽の研究の集大成となっており、
ドイツ・レクイエム (そして交響曲第1番) によってブラームスは彼個人の様式を完全に確立することになる。

この作品のブレーメンでの初演の成功 (ブラームス35歳のとき)によって、
ブラームスはドイツを代表する作曲家という名声を獲得した。

第1曲
ヘ長調、4/4拍子。
低音で響くF音に乗せられて、チェロとヴィオラが控えめに主題を提示し、この壮大な作品の幕を開ける。
弦楽の対位法的な展開を経て、合唱が静かに'Selig sind' 「幸いなるかな」とこの作品全体を貫くモチーフを歌い始める。
第1曲は全体を通して教会で静かに祈りを捧げるような雰囲気で満たされている。
なお、第1曲においてはヴァイオリンが用いられていない。

第2曲
変ロ短調、3/4拍子。
第1曲とは異なり、第2曲は2部構成でそれ自体ひとつのストーリーを持っている。
冒頭、オーケストラによって鬱々とした響きが奏でられると、合唱がそれに応じてこの世の無情さを歌う。
第1部の中間部では長調に移り、忍耐と大地の恵みが柔らかな口調で説かれるが、再び冒頭の沈鬱な音楽が戻ってくる。
唐突にフォルテで主による救いが宣言されるのが第2部の開始の合図となる。
男声合唱で力強く歌われる主題が次いで女声に移り、対位法的にフーガのような盛り上がりを見せる。

第3曲
ニ短調、2/2拍子。
前半ではバス独唱を中心として生きることの苦悩が語られ、後半で神のもとでの救いが歌われる。
全体の構成は第2曲に類似している。

第4曲
変ホ長調、3/4拍子。
前2曲とはまた雰囲気が変わり、安らかな音楽となる。
比較的短い曲であるが、ブラームスの得意とする変奏技法がふんだんに用いられている。

第5曲
ト長調、4/4拍子。
ソプラノそろ3を中心とする、やはり短い曲。
全体として穏やかな音楽が続くが、その中で悲しみと慰めが歌われる。
途中でチェロのソロが登場するなど、これまでの重みのあるオーケストレーションではなく軽く室内楽的な響きによる。
その結果として透き通った天国のような美しさが具現化している。

第6曲
ハ短調、4/4→3/4→4/2。
全曲中最大の盛り上がりを見せる山場がこの第6曲である。
はじめ合唱が重々しく長調とも短調とも決まらないメロディを歌う。
バス独唱がそれを引き継ぐと、徐々に暗さを増しつつ音楽を展開させていく。
その頂点で金管楽器の鋭い響きとともに、死との葛藤を表す激しい音楽へ雪崩れ込む。
最後にはハ長調に辿り着き、主の栄光を明朗なフーガで称える。w

第7曲
ヘ長調、4/4拍子。
第1曲と同じヘ長調で、今度は解放と祝福が歌われる。
音楽の素材も第1曲に基づいており、全曲を主題の上で統一している。

はじめに

あけましておめでとうございます。
本ブログは、ブラームスの作品を紹介して欲しい!という声に応え、
作品解説とYouTube動画を投稿するために作成されました。
週に2回更新を目標に頑張ります。