2016年2月9日火曜日

ピアノソナタ第3番 op.5

ブラームスには珍しい5楽章構成の作品であり, 他にセレナーデ第2番op.16があるのみである. ヘ短調の情熱的な音楽で人気が高い. 部分的にベートーヴェンやショパンを思わせるフレーズが登場するのも興味深い. 特に, ベートーヴェンの交響曲第5番の「運命の動機」が象徴的に引用されている.



第1楽章
ヘ短調, 3/4拍子, ソナタ形式.
スケルツォop.4や, バラードop.10-1といった作品と共通の雰囲気を持つ. 力の入った力作であり, この楽章だけで満腹になりそうなボリュームがある. 構成自体は型どおりであり, 特に冒頭の第1主題が印象的 (それに対する第2主題がやや弱いきらいはあるが).

第2楽章 Andante
変イ長調, 2/4拍子.
楽譜の冒頭に, Otto Inkermannの恋に関する詩が引用されている. 2つの主要主題が何度も順に繰り返される. 冒頭の詩を踏まえると, この2主題は2人の恋人を表すものと考えられる.

第3楽章 Scherzo
ヘ短調, 3/4拍子, スケルツォ.
後年のブラームスには見られない, 典型的なスケルツォ楽章. 勢いよく我が道を駆け抜ける豪快さが魅力的.

第4楽章 Intermezzo
変ロ短調, 2/4拍子.
緩徐楽章その2. 運命の動機が全曲を通して何度も反復される, 不穏な楽章である.

第5楽章 Finale
ヘ短調, 6/8拍子, ロンド.
低音と高音, フォルテとピアノの対比が強烈な楽章. 構成にやや難がある (やや冗長か) ものの, ブラームス若書きの作品として貴重である.


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