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2016年4月6日水曜日

二重協奏曲 op.102

ヴァイオリンとチェロという二人の独奏者を要する協奏曲で, ブラームスの管弦楽作品としては最後のもの. 通称「ドッペル」. 英語ではDouble Concerto, ドイツ語ではDoppelkonzert.
この曲が発表されたのは1887年, 交響曲第4番を仕上げた翌年である. 初演にはブラームスの親しい友人であるヨーゼフ・ヨアヒムとロベルト・ハウスマンが起用された. 9月21日にピアノ伴奏で私的初演された後, 9月23日にバーデンのオーケストラで演奏された. 公開初演はケルンで10/18である. 本作はただちに各地で演奏され, ロンドンでも1888年2月16日にヨアヒムとハウスマンのソロ, やはりブラームスの友人ジョージ・ヘンシェルの指揮で演奏され, 成功を収めた. しかし, ウィーン初演はそれよりずっと遅い1888年12月23日である.
この作品に対する聴衆の反応は概して好意的ではあったが, ブラームスの周囲の人々や批評家の間では批判的な見解も見られた. 例えばクララ・シューマンはこの曲について「他の作品によく見られる新鮮で温和な筆致がこの曲にはありません」と手紙で述べている. これらの指摘はある意味でこの曲の本質を捉えており, バロック風に角ばったこの曲においてブラームスが自身の交響曲で展開したようなロマンティックさを見出すことは難しい. しかしこの古めかしい様式を意図的に再現するという手法は, 交響曲第4番で見せた方向性に沿ったものであり, ブラームスの新しい表現方法として注目すべきである. この様式が周囲の友人に受けが悪いと悟ったブラームスはこの路線を推し進めることを止め, 小規模な作品に目を向けることになる.

2016年3月21日月曜日

ヴァイオリンソナタ第3番 op.108

ヴァイオリンソナタ第2番op.100 (過去記事はこちら) が作曲されたのと同じ1886年の夏にブラームスが避暑地トゥーンに滞在している折に, 第2番と並んでこのニ短調のヴァイオリンソナタも着手された. このように同時期に対比的な作品を作曲することはブラームスにはよくみられる. ピアノ四重奏曲第1番op.25と第2番op.26, 大学祝典序曲op.80と悲劇的序曲op.81は明暗という内容を持つ双子曲であるし, ヴァイオリン協奏曲op.77とヴァイオリンソナタ第1番op.78は大編成と小編成 (あるいは, 大人数の聴衆か, 親しい友人との内輪を想定するか) という意味で良い対比をなす. ただし, このソナタ第3番の作曲は第2番より大幅に遅れ, 第2番がその夏に完成したのに対して, 第3番は終始線を引くことが1888年のトゥーン滞在まで持ち越された. 4楽章構成であるが, どの楽章も小ぶりで, 演奏時間は全体で20分ほどである.

2016年3月8日火曜日

5つの歌曲 op.106

1888年から1889年にかけて作曲された5つの歌曲. 「セレナ―デ」op.106-1が特に有名である.

第1曲 セレナーデ Ständchen
若者が恋人のためにセレナーデを歌う様子が語られる. 喜ばしい気分に満ちた民謡風の旋律が特徴的.

2016年1月10日日曜日

弦楽五重奏曲第2番 op.111

ブラームスは弦楽器だけのための室内楽作品として, 四重奏, 五重奏, 六重奏という3通りの編成の作品を残している.
これらは (少なくとも出版された作品については) 作曲時期が明確に分かれており, 前期に六重奏, 中期に四重奏, 後期の五重奏となっている.
従って, 五重奏曲第2番は, これらの一連の作品の最後のものであり, コンパクトな作品であるがそれに相応しい充実した内容を持っている.
晩年の作品らしい洗練された書法に基づくが, それにも拘わらず様々な生の喜びに満ちた朗らかな曲である.

2016年1月6日水曜日

4つの四重唱曲 op.92

四重唱はブラームスの声楽作品の重要な一角を構成する. 今回紹介するのは, 特に有名な「晩秋」を含む作品92である.

第1曲 おお、美しい夜
星々のきらめきやナイチンゲールの鳴き声に囲まれて, 美への賛美が思わず歌として漏れ出したかのような音楽.


第2曲 晩秋
ホ短調, 3/4拍子.
歌詞がわからなくてもヨーロッパの田園風景が思い浮かぶような強い描写力を持つ.
霧の垂れ込める森, 小麦畑, 最盛期を過ぎた寂しげな花, ...

第3曲 夕べの歌
ヘ長調, 4/4拍子.
白昼と夜の交わる黄昏時の情感を詠った曲.4声部とピアノの対位法的絡み合いの美しさが聴きどころ.

第4曲 なぜ?
変ロ長調, 4/4拍子.
強烈なピアノの前奏に続いて, 「なぜ歌は天に向かって響き渡るのか?」と歌われる冒頭は強いインパクトを持つ.
その後音楽は落ち着き, 歌唱によって星や月の美しさ, そして神の祝福を受けた日常が一層引き立つということが静かに述べられる.
※第4曲のみ四重唱による演奏が見つからなかったので, 合唱による演奏を掲載する.

2016年1月2日土曜日

ヴァイオリン・ソナタ第2番 op.100

交響曲第4番op.98を発表した翌年の夏, ブラームスは避暑地をミュルツツーシュラークからトゥーンへと移した.
この地で作曲されたのは3曲, チェロソナタ第2番, ヴァイオリンソナタ第2番, ピアノ三重奏曲第3番である.
このうちピアノ三重奏曲については、交響曲第4番に匹敵する重く暗い楽想を持つが,
残りの2曲は比較的明るく親しみやすい曲となっている.
本日紹介するのは, 交響曲第2番のような陽光で満たされたヴァイオリンソナタ第2番である.
全編を通して奏でられる穏やかな秋晴れの日を思わせる温かな歌は, 一聴するなり作品番号70番代の一連の作品を連想させる.

第1楽章
イ長調, 3/4拍子, ソナタ形式.
序をおかずピアノにより第一主題が提示される. メロディ自体は4小節で構成されているものの,
最後に1小節だけヴァイオリンの応答があるため, 実質的に5小節を単位としている.
ヴァイオリンによって第一主題が確保されると, ホ長調に転調しすぐに第二主題へと移る.
1小節の休止の後の展開部では, はじめ第一主題が, 次いで結尾主題が扱われる.
繊細に移ろう和声によって醸し出される独特な表情が聴きどころ.
再現部は第一主題が切り詰められているが, おおよそ型どおり.
相対的に長大なコーダでは静と動が対比される.

第2楽章
ヘ長調, 2/4拍子.
ABABAという単純な構成を持つが, 毎回変奏されるので単調さはない.
むしろ, ロンドやスケルツォ, メヌエットといった要素が巧妙に溶け込んだ巧妙な構成を持つと言えよう.
全体としてモーツァルトのような可憐さを備えた楽曲である.
AはAndante tranquilloで跳躍の多い旋律が優雅に歌われる.
Bはvivaceでピアノとヴァイオリンが軽快に楽譜の間を走りまわる.

第3楽章
イ長調, 2/2拍子, ロンド形式.
幅の広い, ゆったりとしたヴァイオリンのメロディーで始まる.
ロンド形式となっているが, この楽章のほとんどすべての要素がロンド主題から展開されたものであり,
自由な変奏曲と表現するほうが実態に近い.
途中やや暗くなることがあっても, 最初の主題の明るさを失わずに前を向いて進んでいくひたむきさが心を打つ.