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2017年4月8日土曜日

ジネット・ヌヴーのブラコン

飛行機事故により若くして亡くなった女性ヴァイオリニスト、ジネット・ヌヴー (Ginette Neveu, 1919/8/11-1949/10/28) による、 ブラームスのヴァイオリン協奏曲の録音についてまとめておく。

ジネット・ヌヴーの演奏は情熱的なスタイルで知られ、しばしば「炎のような」と形容される。 その名は1935年、15歳のときにヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールでダヴィッド・オイストラフを大差で下し第1位を得たことで知られるようになった。 それから第二次大戦の間を除いて熱心に演奏活動を展開するが、30歳のときにアメリカへ向かう途上で墜落事故に巻き込まれ、その生涯を終えた。

ジネット・ヌヴーによるブラームスの演奏としては、他に兄のジャン・ヌヴーとのソナタ第3番が残されている。


2016年4月26日火曜日

セレナーデ第1番 op.11

ブラームスは1857年から1859年の三年間, 冬の間デトモルトの宮廷でピアノの指導および合唱団の指揮をする仕事を引き受けていた. これは定職についていない若いブラームスに作曲に専念する時間的および金銭的余裕を生み出した. この時期に作曲されたのが, このセレナーデ第1番ニ長調である. ハイドンの作品を研究した成果が発揮されているが, これは作曲技法の面だけでなく, そもそもセレナーデという18世紀以前を思い出させるようなジャンル選択にも表れている. もともとは室内楽のために作曲され, 後に管弦楽用に改定された.
モーツァルトやハイドンのような陽気で朗らかな曲想はブラームスの他の作品と一線を画し, そのためか演奏機会に乏しい.

2016年4月6日水曜日

二重協奏曲 op.102

ヴァイオリンとチェロという二人の独奏者を要する協奏曲で, ブラームスの管弦楽作品としては最後のもの. 通称「ドッペル」. 英語ではDouble Concerto, ドイツ語ではDoppelkonzert.
この曲が発表されたのは1887年, 交響曲第4番を仕上げた翌年である. 初演にはブラームスの親しい友人であるヨーゼフ・ヨアヒムとロベルト・ハウスマンが起用された. 9月21日にピアノ伴奏で私的初演された後, 9月23日にバーデンのオーケストラで演奏された. 公開初演はケルンで10/18である. 本作はただちに各地で演奏され, ロンドンでも1888年2月16日にヨアヒムとハウスマンのソロ, やはりブラームスの友人ジョージ・ヘンシェルの指揮で演奏され, 成功を収めた. しかし, ウィーン初演はそれよりずっと遅い1888年12月23日である.
この作品に対する聴衆の反応は概して好意的ではあったが, ブラームスの周囲の人々や批評家の間では批判的な見解も見られた. 例えばクララ・シューマンはこの曲について「他の作品によく見られる新鮮で温和な筆致がこの曲にはありません」と手紙で述べている. これらの指摘はある意味でこの曲の本質を捉えており, バロック風に角ばったこの曲においてブラームスが自身の交響曲で展開したようなロマンティックさを見出すことは難しい. しかしこの古めかしい様式を意図的に再現するという手法は, 交響曲第4番で見せた方向性に沿ったものであり, ブラームスの新しい表現方法として注目すべきである. この様式が周囲の友人に受けが悪いと悟ったブラームスはこの路線を推し進めることを止め, 小規模な作品に目を向けることになる.

2016年3月15日火曜日

交響曲第3番 op.90 第4楽章

第4楽章 Allegro
ヘ短調, 2/2拍子, ソナタ形式.
長調のソナタ作品の最終楽章として同主調である短調を用いることは, 古典的な感覚からするとそれ自体特筆すべき事項となる (逆に短調-長調と発展するのはベートーヴェン以来よく見られる手法である). この手法を用いた作品としてメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」が一般によく知られているが, ブラームスは若いときにすでにピアノ三重奏曲第1番op.8でこれを試みている. この交響曲でブラームスは「長調-短調」という固定概念に挑戦し, F-As-Fというモットーに基づくことで, どちらともつかない独特の世界を構築することに成功した (明とも暗ともつかないのは人の心そのものである).

2016年3月14日月曜日

交響曲第3番 op.90 第3楽章

第3楽章 Poco Allegretto
ハ短調, 3/8拍子, 三部形式.
ブラ3のモットー, F-As-Fは, ヘ長調であるにもかかわらず (Aではなく) As音を含むという著しい特徴を持つ. このことにより, ヘ長調 (F-A-C) の曲でありながらヘ短調 (F-As-F) へ傾斜するというこの交響曲の基本的な特徴が生じる. 第1楽章がヘ長調, 第4楽章がヘ短調という楽章構成が典型的にそうであるし, それ以外にも, 第2楽章の28小節から32小節, 第4楽章の第2主題の入り (52小節) など, この曲全体を通して要所にこの形が現れる. 第3楽章においても, まさにこの手法によって第24小節でハ長調に自然に移っている. しかもこの箇所では, イ短調の香りを添えることで長調を感じさせない哀愁を醸し出しているのである. これらの卓越した和声感覚は, この時期のブラームスの円熟した作曲技法を窺わせる.

2016年3月13日日曜日

交響曲第3番 op.90 第2楽章

第2楽章 Andante
ハ長調, 4/4拍子, 三部形式.
クラリネットとファゴットによる, 暖かな主要主題で始まる. ただ, どこか寂しげで過去を懐かしむような趣がある. それに対する低弦の応答がモットー (の変形) である. 23小節に渡るクラリネットの独壇場が終わると, 主要主題に基づく推移部となる. ここでは長和音と短和音の交錯が絶妙なニュアンスを醸し出している (この点については後の楽章で再び触れる). 一つの山場を築いて静寂が訪れると, 再びクラリネットとファゴットによって副次旋律が悲し気に提示される (41小節). 小結尾 (57小節) は引き続き調性のはっきりしない静的なもの.

2016年3月12日土曜日

交響曲第3番 op.90 第1楽章

ブラームスの交響曲第3番, 通称「ブラ3」を取り上げる. その内容が膨大であることを考慮して, 記事は各楽章ごとに4日連続で投稿する. この曲の作曲の経緯等についてはこの記事を参照のこと.

第1楽章 Allegro con brio
ヘ長調, 6/4拍子, ソナタ形式.
6/4拍子というリズムをブラームスは好んでいたようで, 他にピアノ協奏曲第1番第1楽章やヴァイオリンソナタ第1番第1楽章でも採用している. この6/4拍子はあくまで2拍子であるということを強調しておく. 特に本作の第1主題 (3小節目からのヴァイオリン) は3拍子のようにも聞こえるが, 1, 2小節目の管楽器, あるいは3小節目からのトロンボーンの譜面は明白に2拍子であることがわかるようになっている. ちなみに, この第1主題はシューマンの交響曲第1番第2楽章に現れる旋律によく似ているが, 偶然の一致と思われる.

2016年2月21日日曜日

ヴァイオリン協奏曲 op.77

2曲の交響曲を書き終えた後の円熟期の作品. ブラームスの代表作とも言える知名度を持つことからして, 詳しくこの作品について述べる必要はないだろう. (i.e. 誰でも知ってるエピソードについてはjawp等をあたってください.)

2016年1月22日金曜日

ピアノ協奏曲第1番 op.15

本日1/22は, ピアノ協奏曲第1番ニ短調の初演からちょうど157年にあたる.
初演の5日後にライプツィヒでで作曲者自身の独奏によって行われたこの曲の演奏は, 惨憺たる大失敗に終わった. なんと, 拍手をしたのがわずか3人だけだったと伝えられる. 一旦は交響曲として作られたことに由来する協奏曲らしからぬシンフォニックな響きや, その長大さ, ソリストの技巧を披露する派手なパッセージの不足がその原因であろう.
その後のクララ・シューマンらの尽力によって, 現在ではブラームス初期の傑作としての評価が確立している.

第1楽章
ニ短調, 6/4拍子, 協奏ソナタ形式.
強烈なティンパニの連打に続き, 弦楽器によって第1主題が堂々と奏される. 第2主題を提示することなく管弦楽パートを終えると, 静かにソロが演奏に加わる. 展開部終盤での盛り上がり, そしてそこからの再現部への突入が聞き所.

第2楽章
ニ長調, 6/4拍子, 三部形式.
弦楽器とファゴットの穏やかな旋律から始まる. 独奏の扱いや管弦楽法といった点でピアノ協奏曲第2番第3楽章を思わせる.

第3楽章
ニ短調, 2/4拍子, ロンド.
古めかしいロンド主題による, 走り抜けるような爽快な楽章. 副次主題は1楽章の第2主題に似たもので, 1回目はヘ長調, 2回目はニ短調で現れる. 短いカデンツァを経てニ長調に転調すると, 輝かしく全曲を締める.

2016年1月8日金曜日

大学祝典序曲 op.80

ブレスラウ大学からの名誉博士号授与に対する返礼として1880年に作曲された. 「だいしゅく」と略される.
ドイツの学生歌が4曲引用されている他, ブラームスの管弦楽作品の中で最大の編成である点が特徴.
姉妹作に悲劇的序曲op.81がある.

ハ短調, 4/4拍子→ハ長調, 4/4拍子, 自由なソナタ形式.
交響曲第1番第4楽章で採用された, 展開部と再現部を兼ね備えた「展開的再現部」が採用されている.
冒頭, 大太鼓のリズムに乗ってハ短調の第1主題が弦楽器で刻まれる. この主題はブラームス本人の創作である.
この主題に基づいて一つの山場を築き, それが落ち着いたところで管楽器によって「僕らは立派な学び舎を建てた」が高らかに奏される.
その後, ハ長調で第1主題を確保すると, やはり第1主題に基づく経過句を経て, 第2主題である「祖国の父」に辿りつく.
小結尾はファゴットのユーモラスな「あそこの山から来るのは何?」で, 全管弦楽でそれを繰り返して提示部を締める.
展開的再現部は17小節目からの繰り返しから始まるが, 直前の勢いに引っ張られて力強い音楽へと変貌する.
一旦落ち着いた後に再び盛り上がり, 3拍子の進行畳み掛けると, ハ長調での高らかな第1主題の再現となる.
手早く第2主題に移った後は提示部と同じ流れになる.ただし小結尾のファゴットは省略される.
コーダは「だから愉快にやろうじゃないか」による壮麗なもの.

2016年1月3日日曜日

ハイドンの主題による変奏曲 op.56

本作品が発表されるまで, 管弦楽のための作品としては初期にピアノ協奏曲および2曲のセレナーデを発表して以来10年が経過している.

主題
木管楽器を中心として穏やかな主題が提示される.
やや変則的な5小節を単位とする旋律であるが, それに伴う不安定感は一切感じられない.

第一変奏
主題の最後の同音連打を金管楽器が反復すると, 弦楽器の流れるような旋律が零れ落ちる.

第二変奏
変ロ短調に転調する. オクターブの跳躍が目立つ弦楽器と, 付点のリズムで細かく動く管楽器の対比.

第三変奏
再び長調に戻り, 息の長いメロディが奏でられる.

第四変奏
3/8拍子でテンポを落とし, 短調の悲しい歌となる. 上昇音型のメロディと, 16音符で下降する対旋律.

第五変奏
6/8拍子の軽快な変奏. 頻繁なアウフタクトが目立つ.

第六変奏
2/4 拍子に戻り, もとの主題の旋律が再び明確に提示される. ホルンの勇壮な響きが特徴的.

第七変奏
シチリアーノのリズムによる, 間奏曲風の音楽.

第八変奏
変ロ短調の主和音が回避される結果として, 落ち着かない不気味とすら言える変奏である.

終曲
終曲は, これ自体がもとの変奏曲主題を簡略化した主題に基づくパッサカリア (変奏曲の一種)となっている.
対位法的操作が多く, 初聴ではパッサカリア主題の提示を認識するのがやや難しい.
数年後に完成される交響曲第1番に類似したパッセージがいくつか含まれるのが興味深い.
途中の短調の部分から長調に戻る際にもとの変奏曲主題も再現する.