ヴァイオリンとチェロという二人の独奏者を要する協奏曲で, ブラームスの管弦楽作品としては最後のもの. 通称「ドッペル」. 英語ではDouble Concerto, ドイツ語ではDoppelkonzert.
この曲が発表されたのは1887年, 交響曲第4番を仕上げた翌年である. 初演にはブラームスの親しい友人であるヨーゼフ・ヨアヒムとロベルト・ハウスマンが起用された. 9月21日にピアノ伴奏で私的初演された後, 9月23日にバーデンのオーケストラで演奏された. 公開初演はケルンで10/18である. 本作はただちに各地で演奏され, ロンドンでも1888年2月16日にヨアヒムとハウスマンのソロ, やはりブラームスの友人ジョージ・ヘンシェルの指揮で演奏され, 成功を収めた. しかし, ウィーン初演はそれよりずっと遅い1888年12月23日である.
この作品に対する聴衆の反応は概して好意的ではあったが, ブラームスの周囲の人々や批評家の間では批判的な見解も見られた. 例えばクララ・シューマンはこの曲について「他の作品によく見られる新鮮で温和な筆致がこの曲にはありません」と手紙で述べている. これらの指摘はある意味でこの曲の本質を捉えており, バロック風に角ばったこの曲においてブラームスが自身の交響曲で展開したようなロマンティックさを見出すことは難しい. しかしこの古めかしい様式を意図的に再現するという手法は, 交響曲第4番で見せた方向性に沿ったものであり, ブラームスの新しい表現方法として注目すべきである. この様式が周囲の友人に受けが悪いと悟ったブラームスはこの路線を推し進めることを止め, 小規模な作品に目を向けることになる.
ところが, この「古い響き、それでいて新しい響き」というアイデアは, ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」において既に挑戦されているのである. 一般にワーグナーとブラームスは敵対的, あるいは対立するものと解釈されることが多いが, 決してそうではなく, むしろ両者は補完し合って19世紀ドイツ音楽を構成するものである. そのような観点に立つと, 二人ともが古い音楽に対して同じような見解を持つことは偶然ではなくなる. 個人的意見であるが, この延長線上にヒンデミットの「白鳥を焼く男」を据えるのが妥当ではなかろうか.
第1楽章
イ短調, 4/4拍子, 変則的な協奏ソナタ形式. オーケストラによる提示部の前に長いチェロとヴァイオリンによる提示部が来るという変則的な構成.
イ短調, 4/4拍子, 変則的な協奏ソナタ形式. オーケストラによる提示部の前に長いチェロとヴァイオリンによる提示部が来るという変則的な構成.
第2楽章
ニ長調, 3/4拍子, 三部形式. ヴァイオリンとチェロがユニゾンで息の長い旋律を奏でる.
ニ長調, 3/4拍子, 三部形式. ヴァイオリンとチェロがユニゾンで息の長い旋律を奏でる.
第3楽章
イ短調, 2/4拍子, ソナタ形式. カプリッチオop.76-2を思わせるシニカルな主題が印象的.
イ短調, 2/4拍子, ソナタ形式. カプリッチオop.76-2を思わせるシニカルな主題が印象的.
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