2016年1月10日日曜日

弦楽五重奏曲第2番 op.111

ブラームスは弦楽器だけのための室内楽作品として, 四重奏, 五重奏, 六重奏という3通りの編成の作品を残している.
これらは (少なくとも出版された作品については) 作曲時期が明確に分かれており, 前期に六重奏, 中期に四重奏, 後期の五重奏となっている.
従って, 五重奏曲第2番は, これらの一連の作品の最後のものであり, コンパクトな作品であるがそれに相応しい充実した内容を持っている.
晩年の作品らしい洗練された書法に基づくが, それにも拘わらず様々な生の喜びに満ちた朗らかな曲である.

第1楽章
ト長調, 9/8拍子, ソナタ形式.
勢いのあるト長調の和音にのって, チェロが低音から高音まで動き回る第1主題を奏でる.
第2主題から小結尾までに至る流れは, 後のクラリネット五重奏曲を思わせる.
展開部は, 5本の楽器が互いに競い合い, 協力し, 掛け合う複雑なもので, 熟練の作曲技術を窺わせる.

第2楽章 Adagio
ニ短調, 2/4拍子.
民謡風の主題に基づく自由な変奏曲とみなせる. 第1ヴィオラの活躍が目立つ.

第3楽章 Un poco Allegretto
ト短調, 3/4拍子, メヌエット.
主部がト短調, トリオがト長調のメヌエットで, 初期のセレナーデを思わせる単純な節回しの音楽ではある.
しかし, そのメロディを支えるバスや内声に, 奇を衒うことこそないもののこれしかないと思わせる適切な音符が与えられることによって,
全体を魅力的な音楽へと昇華している.

第4楽章
ト長調, 2/4拍子, ソナタ形式
ヴィオラによるロ短調のジプシー風のメロディで始まる. ヴァイオリンが加わるとト長調に転調し, 快活に音楽を進める.
随所でシンコペーションなどのリズム操作によって畳み掛け, 奏者がわずか5人とは思えない盛り上がりを見せる.

楽譜(IMSLP)

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