2016年3月6日日曜日

ピアノ四重奏曲第3番 op.60

本作品を論じる際には, 常にゲーテの小説「若きウェルテルの悩み」が引用される (jawp記事). というのも, 本作の下敷きとなる嬰ハ短調のピアノ四重奏曲が書かれたのは, シューマン夫妻との出会いやロベルト・シューマンの自殺未遂から死別, アガーテ・フォン・ジーボルトとの婚約に関する一連の騒動といった出来事と同時期であり, その意味でこの曲はブラームスの「青春の結晶」と言えるからである. それを後年になってハ短調のピアノ四重奏曲として改稿して出版したのがこのop.60であり, その由来から当然であるが, 同時期の他の作品とは異なる, 若いブラームスを思わせる作品となっている.



第1楽章
ハ短調, 3/4拍子, ソナタ形式. ピアノによるC音の強奏に続いて, 弦楽器が重く暗いため息のようなメロディを提示する. 突然の激情, 愛の第2主題など, 数少ない青春の音楽であり, まさに「ウェルテル」という形容が相応しい.

第2楽章
ハ短調, 6/8拍子, スケルツォ. FAEソナタのスケルツォを思わせる, 躍動感のあるスケルツォ. 4分程度と, 約10分要する他の楽章に比べて短い.

第3楽章
ホ長調, 4/4拍子, 三部形式. チェロの美しい旋律で始まる. 暖かな光に包まれたような, 心の落ち着く音楽である.

第4楽章
ハ短調, 2/2拍子, ソナタ形式. 冒頭, ヴァイオリンが第1主題を奏でる. 伴奏のピアノに含まれるベートーヴェンの「運命の動機」は, 後に重要な役割を果たすことになる.


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