2016年3月27日日曜日

弦楽五重奏曲第1番 op.88

ブラームスの円熟期に書かれた本作であるが, 個人的にはブラームスの他作品のように傑出した完成度を誇るようには思えない. 無難に構成されたそつのない作品, とでも評価できるだろうか. 5人の弦楽器奏者という編成を存分に活用することは, 後の第2番op.111 (記事) によって達成される. 部分的に交響曲第3番op.90を思わせるフレーズや処方が登場するのがおもしろい.

第1楽章 Allegro non troppo ma con brio
へ長調, 4/4拍子, ソナタ形式.
冒頭, まず第1ヴァイオリンがG線で第1主題を奏でると, それに覆いかぶさるように第2ヴァイオリンが1オクターブ上で同じ主題を確保する. 幅広い朗々と歌うようなこの第1句と, 付点のリズムによる活動的な第2句が第1主題を構成する. 第2主題はヴィオラによる流れるような旋律.

第2楽章 Grave ed appasionato
嬰ハ短調, 3/4拍子, メヌエット.
ブラームスはここで緩徐楽章であるにも関わらずメヌエットの様式を用いることで, 通常4楽章のソナタ作品に置かれる第2楽章, 第3楽章の要素を単一の楽章によって代替している. 嬰ハ短調の主部はチェロによる嬰ハ長調のメロディで始まるが, すぐに短調となり交響曲第2番第2楽章を思わせる陰のある幻想的な風景が展開される. 2つあるトリオはどちらもタイプは異なるものの快活なアップテンポの音楽である. 最後はイ長調で打ち切られることも注目に値する.

第3楽章 Allegro energico
へ長調, 3/2拍子, ソナタ形式.
フーガのような開始で, 5人全員が揃ったところでドミナント和音まで盛り上げると, 小休止を挟んで改めて主題の提示となる. 第2主題は第1主題の流れを内声に引き継ぎ, その上声に提示される. 展開部は比較的短く, 変形された第1主題を再現することで再現部の入りを曖昧にしている.


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