2016年3月12日土曜日

交響曲第3番 op.90 第1楽章

ブラームスの交響曲第3番, 通称「ブラ3」を取り上げる. その内容が膨大であることを考慮して, 記事は各楽章ごとに4日連続で投稿する. この曲の作曲の経緯等についてはこの記事を参照のこと.

第1楽章 Allegro con brio
ヘ長調, 6/4拍子, ソナタ形式.
6/4拍子というリズムをブラームスは好んでいたようで, 他にピアノ協奏曲第1番第1楽章やヴァイオリンソナタ第1番第1楽章でも採用している. この6/4拍子はあくまで2拍子であるということを強調しておく. 特に本作の第1主題 (3小節目からのヴァイオリン) は3拍子のようにも聞こえるが, 1, 2小節目の管楽器, あるいは3小節目からのトロンボーンの譜面は明白に2拍子であることがわかるようになっている. ちなみに, この第1主題はシューマンの交響曲第1番第2楽章に現れる旋律によく似ているが, 偶然の一致と思われる.
さて, この交響曲は, 冒頭で提示されるF-As-Fというモットーに基づいているという点が極めて重要である. ヘ長調であるにも関わらずAs音を含むこのモットーは, 1楽章においては随所に明白な形で出現する. 例えば1小節目のFl, 3小節目Tb, 7小節目Hrなど, 第1主題を支える形で何度も使用される. また, 小結尾のOb (49小節) や, 展開部の後半, 第1主題の再現を告げるホルン (101小節) など, 要所を押さえるのもこのモットーである.
それでは曲の構造を順に見ていこう. 3小節からの第1主題, 15小節からの推移部で同音連打とモットーを繰り返し気分を落ち着けると, 36小節でイ長調の第2主題となる. この主題は9/4拍子で, 狭い音域を順次進行で動き回る様が, 分散和音的な第1主題と好対照をなしている. 木管楽器によって確保された後, 弦楽器がその反行形を奏すると, オーボエがモットー主題によって小結尾の始まりを告げる. 前半はイ長調, 後半はイ短調によって大きく盛り上がると, そのまま展開部になだれ込む (提示部全体は繰り返される). 展開部 (71小節から) は, 直前のテンションを引きずって大きく転調し, 嬰ハ短調に到達したところで低弦による第2主題となる. 90小節でニ短調の木管楽器に第2主題部が引き継がれると, 勢いを失って立ち止まりそうになる. すると, ホルンが変ホ長調でモットーを印象的に奏し, 気分を一新する (101小節). そのまま変ホ短調で第1主題がカノン的に積み上げられると, 120小節でF-As-Fが再現し, そのまま再現部となる. 再現部は推移部がやや圧縮されている他は提示部通りで, 第1主題がヘ長調で124小節から, 第2主題がニ長調で149小節から, 小結尾が158小節からとなっている. コーダは181小節からで, モットーと第1主題により大きく畳み掛けたあと, 199小節目でffに到達し, その後はどんどん落ち着く方向に向かい, 210小節でppとなる. 最後はヘ長調でモットーが響く中穏やかに楽章を終える.
交響曲の第1楽章としては224小節と比較的小規模な作品である.


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