2016年3月14日月曜日

交響曲第3番 op.90 第3楽章

第3楽章 Poco Allegretto
ハ短調, 3/8拍子, 三部形式.
ブラ3のモットー, F-As-Fは, ヘ長調であるにもかかわらず (Aではなく) As音を含むという著しい特徴を持つ. このことにより, ヘ長調 (F-A-C) の曲でありながらヘ短調 (F-As-F) へ傾斜するというこの交響曲の基本的な特徴が生じる. 第1楽章がヘ長調, 第4楽章がヘ短調という楽章構成が典型的にそうであるし, それ以外にも, 第2楽章の28小節から32小節, 第4楽章の第2主題の入り (52小節) など, この曲全体を通して要所にこの形が現れる. 第3楽章においても, まさにこの手法によって第24小節でハ長調に自然に移っている. しかもこの箇所では, イ短調の香りを添えることで長調を感じさせない哀愁を醸し出しているのである. これらの卓越した和声感覚は, この時期のブラームスの円熟した作曲技法を窺わせる.
冒頭, チェロによって有名な旋律が奏でられる. ヴァイオリンによってそれが確保されると, 上述のハ長調の経過句を経た後に, 管楽器にふたたび冒頭主題が出る. 54小節からの中間部は楽譜上では変イ長調となっているが, やはり明るさは感じられず, 長和音とは信じられないほどである. 99小節でホルンのソロが冒頭旋律を再現するのが印象的である.
クララ・シューマンは, ブラームス宛の手紙でこの楽章について 「私にはひとつの真珠のごとく思われる。けれどもそれは悲哀の涙が周りを流れる灰色の真珠で、終わりの転調はまったく素晴らしい」 と述べている. (原田光子訳)


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