2016年3月23日水曜日

4つのピアノ小品集 op.119

本作はブラームスが最後に出版したピアノのための作品集で, 1993年に発表された(同じ年にピアノのための51の練習曲も出版しているが). 6つのピアノ小品op.118も同時に作曲されている. どの曲を取っても傑出した内容を持っており, ブラームスの晩年の一連のピアノ小品, そしてブラームスの122に及ぶ作品の総括に相応しい.

第1曲 インテルメッツォ
ロ短調, 3/8拍子.
第4曲でも特にそうであるが, この作品集においては不協和音の使用が目立っている. ブラームスはかねてより不協和音を好みモーツァルトの不協和音の用法を称賛していた. 交響曲第3番の時期から見られる和声法への挑戦の結果, 独自の和声感覚に到達し, それを本作において具現化したと言える. 拡大された和声法は20世紀前半にシェーンベルクらによってさらに推し進められ, 最終的に和声という概念を根本的に破壊することになる. 故に, この作品119-1は18世紀の古典和声と20世紀の前衛音楽を繋ぐという非常に重要な意義を持つ.
本作品の真価を理解するためには, 録音を聞くのではなく, 実演に接するか, 自分で演奏することを強く薦める.

第2曲 インテルメッツォ
ホ短調, 3/4拍子.
e-moll - E-dur - e-mollという三部形式にはなっているが, 主部は冒頭の主題だけに基づいており, 中間部もその主題を長調に変奏したものであるから, 実質的に単一の主題による変奏曲に近い. しっとりと柔らかい, 雨の日の午後のような雰囲気.

第3曲 インテルメッツォ
ハ長調, 6/8拍子.
楽譜にして3ページ, 演奏時間では2分かからないというごく短い作品. 冒頭中声部に主題が現れるのが特徴的. 常に自制を失わない上品さを保ちつつ, 軽快にあちこちを走り回りながら戯れるような愛らしい曲である.

第4曲 ラプソディー
変ホ長調, 2/4拍子.
重厚な和音による力強いメロディで始まる. 半音で衝突する下降音型, 星々の瞬きのようなアルペジオなどが散りばめられている. 強烈なスフォルツァンド・ピアノで唐突に落ち着くと, そのC-D-Esという上昇音型に基づく中間部に入る. 落ち着いた調子ながら変化に富んでおり, 様々な旋律が歌われる. ハ長調で冒頭主題の変形が静かに出されると, 徐々に音楽は不穏さを増しつつ盛り上がり, その頂点で変ホ長調にたどり着くと冒頭の再現となる. しかし長調は長くは持たず, 変ホ短調に移ると荒々しいコーダとなり, 短調の響きのままこの劇的な小品を終える.


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