2016年1月4日月曜日

4つの厳粛な歌 op.121

ブラームスが発表した最後の歌曲集がこの「4つの厳粛な歌」であり, 第4曲を除いて死の前年1896年に作曲された.
親しい友人との死別を重ねたブラームスの「辞世の句」と言える.
その歌詞も死を主たるテーマとして取り扱うもので, まさに「厳粛な」という形容が相応しい.

第1曲 「人間の成り行きは」
人は動物と同じく死後は塵に還る, という虚無的な旧約聖書のテクストによる.
単純な音型の繰り返しを主としており一見極めて単純な楽譜に思えるが, 熟練の技により絶妙な情感が醸し出されている.

第2曲 「わたしは顔を向けて見た」
現世を嘆き, それに直面していないまだ生まれぬ者を羨むという厭世的な歌詞.
第1曲と同じく, 長年の経験の総決算とも言える作曲技巧が単純な譜面に結実している.

第3曲 「おお死よ, なんと苦々しいものか」
恵まれた者にとって死は苦痛であるが, そうでない者にとってはむしろ喜ばしいものである, という歌詞.
弱者にとっての死が, 長調に転調し死を愛おしむような歌唱で表現されるのが効果的である.

第4曲 「たとえわたしが人間の言葉で」
この曲のみ1892年に作曲された. そのためか, 歌詞も新約聖書による愛の大切さを説くものである.
ピアノ左手の弱拍に置かれた低音が, 歌唱の前向きな音楽を後ろ向きに抑制している.

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