2016年3月31日木曜日

ライネッケ フルート協奏曲

年度末で忙しくって記事を書く時間が取れず, 書き上がりませんでした. 4/2日からはブラームスの記事を上げるので許してください.
そういうわけで, ライネッケのフルート協奏曲op.283. ライネッケはブラームスと同世代の作曲家で, 非常に多作, またモーツァルトのピアノ協奏曲の演奏でも知られた人物です. ライプツィヒの音楽界の重鎮で, 当時はかなり著名だったけれど, 現在の知名度は... ブラームスのドイツ・レクイエムの全曲版の初演(1869.2.18)において指揮をしたことと, この曲がフルート奏者に知られている, くらい?

2016年3月30日水曜日

モーツァルト ミサ曲ハ短調 K427

コンスタンツェとの結婚の許しを得るために構想されたが, 大規模さ故に未完で残された. モーツァルトの宗教音楽としてはレクイエムに次ぐ知名度を誇り, 「ハ短調ミサ」または「大ミサ曲」として知られる.

2016年3月27日日曜日

弦楽五重奏曲第1番 op.88

ブラームスの円熟期に書かれた本作であるが, 個人的にはブラームスの他作品のように傑出した完成度を誇るようには思えない. 無難に構成されたそつのない作品, とでも評価できるだろうか. 5人の弦楽器奏者という編成を存分に活用することは, 後の第2番op.111 (記事) によって達成される. 部分的に交響曲第3番op.90を思わせるフレーズや処方が登場するのがおもしろい.

第1楽章 Allegro non troppo ma con brio
へ長調, 4/4拍子, ソナタ形式.
冒頭, まず第1ヴァイオリンがG線で第1主題を奏でると, それに覆いかぶさるように第2ヴァイオリンが1オクターブ上で同じ主題を確保する. 幅広い朗々と歌うようなこの第1句と, 付点のリズムによる活動的な第2句が第1主題を構成する. 第2主題はヴィオラによる流れるような旋律.

2016年3月25日金曜日

5つの詩 op.19

比較的初期のブラームスの歌曲集で, 1862年にSimrockから出版された. この次に出版された歌曲集は有名な9つの歌曲op.32 (記事) で, およそ3年のブランクがある.

第1曲 口づけ Der Kuß
恋人と初めてキスをするときの胸の高まりが情熱的に表現される.

第2曲 別離 Scheiden und Meiden
この曲と第3曲は同一の主題に基づく歌曲である. 恋人との別れに際しての感情が切々と歌われる.

2016年3月23日水曜日

4つのピアノ小品集 op.119

本作はブラームスが最後に出版したピアノのための作品集で, 1993年に発表された(同じ年にピアノのための51の練習曲も出版しているが). 6つのピアノ小品op.118も同時に作曲されている. どの曲を取っても傑出した内容を持っており, ブラームスの晩年の一連のピアノ小品, そしてブラームスの122に及ぶ作品の総括に相応しい.

第1曲 インテルメッツォ
ロ短調, 3/8拍子.
第4曲でも特にそうであるが, この作品集においては不協和音の使用が目立っている. ブラームスはかねてより不協和音を好みモーツァルトの不協和音の用法を称賛していた. 交響曲第3番の時期から見られる和声法への挑戦の結果, 独自の和声感覚に到達し, それを本作において具現化したと言える. 拡大された和声法は20世紀前半にシェーンベルクらによってさらに推し進められ, 最終的に和声という概念を根本的に破壊することになる. 故に, この作品119-1は18世紀の古典和声と20世紀の前衛音楽を繋ぐという非常に重要な意義を持つ.
本作品の真価を理解するためには, 録音を聞くのではなく, 実演に接するか, 自分で演奏することを強く薦める.

2016年3月21日月曜日

ヴァイオリンソナタ第3番 op.108

ヴァイオリンソナタ第2番op.100 (過去記事はこちら) が作曲されたのと同じ1886年の夏にブラームスが避暑地トゥーンに滞在している折に, 第2番と並んでこのニ短調のヴァイオリンソナタも着手された. このように同時期に対比的な作品を作曲することはブラームスにはよくみられる. ピアノ四重奏曲第1番op.25と第2番op.26, 大学祝典序曲op.80と悲劇的序曲op.81は明暗という内容を持つ双子曲であるし, ヴァイオリン協奏曲op.77とヴァイオリンソナタ第1番op.78は大編成と小編成 (あるいは, 大人数の聴衆か, 親しい友人との内輪を想定するか) という意味で良い対比をなす. ただし, このソナタ第3番の作曲は第2番より大幅に遅れ, 第2番がその夏に完成したのに対して, 第3番は終始線を引くことが1888年のトゥーン滞在まで持ち越された. 4楽章構成であるが, どの楽章も小ぶりで, 演奏時間は全体で20分ほどである.

2016年3月19日土曜日

3つの宗教合唱曲 op.37

無伴奏女声合唱のための3つの短い作品である. ブラームスのラテン語のテキストによる声楽作品は, 本作op.37とアヴェ・マリアop.12だけである.

第1曲 O bone Jesu
わずか18小節ながら複雑な構造を持っているが, 女声合唱の響きが美しい. 典礼用合唱曲

2016年3月17日木曜日

5つの歌曲 op.71

この5つのリートはすべて1877年に作曲されたものであり, いずれも恋をテーマにしている. 第5曲が特によく知られており, しばしばチェロで奏される.

第1曲 春は優しい恋の季節 Es Liebt sich so Lieblich im Lenze
民謡調の親しみやすい旋律, そして短いながらも変化に富む音楽で, かなり聴きやすい作品である. 羊飼いの娘の恋の芽生えを陳述する.

2016年3月15日火曜日

交響曲第3番 op.90 第4楽章

第4楽章 Allegro
ヘ短調, 2/2拍子, ソナタ形式.
長調のソナタ作品の最終楽章として同主調である短調を用いることは, 古典的な感覚からするとそれ自体特筆すべき事項となる (逆に短調-長調と発展するのはベートーヴェン以来よく見られる手法である). この手法を用いた作品としてメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」が一般によく知られているが, ブラームスは若いときにすでにピアノ三重奏曲第1番op.8でこれを試みている. この交響曲でブラームスは「長調-短調」という固定概念に挑戦し, F-As-Fというモットーに基づくことで, どちらともつかない独特の世界を構築することに成功した (明とも暗ともつかないのは人の心そのものである).

2016年3月14日月曜日

交響曲第3番 op.90 第3楽章

第3楽章 Poco Allegretto
ハ短調, 3/8拍子, 三部形式.
ブラ3のモットー, F-As-Fは, ヘ長調であるにもかかわらず (Aではなく) As音を含むという著しい特徴を持つ. このことにより, ヘ長調 (F-A-C) の曲でありながらヘ短調 (F-As-F) へ傾斜するというこの交響曲の基本的な特徴が生じる. 第1楽章がヘ長調, 第4楽章がヘ短調という楽章構成が典型的にそうであるし, それ以外にも, 第2楽章の28小節から32小節, 第4楽章の第2主題の入り (52小節) など, この曲全体を通して要所にこの形が現れる. 第3楽章においても, まさにこの手法によって第24小節でハ長調に自然に移っている. しかもこの箇所では, イ短調の香りを添えることで長調を感じさせない哀愁を醸し出しているのである. これらの卓越した和声感覚は, この時期のブラームスの円熟した作曲技法を窺わせる.

2016年3月13日日曜日

交響曲第3番 op.90 第2楽章

第2楽章 Andante
ハ長調, 4/4拍子, 三部形式.
クラリネットとファゴットによる, 暖かな主要主題で始まる. ただ, どこか寂しげで過去を懐かしむような趣がある. それに対する低弦の応答がモットー (の変形) である. 23小節に渡るクラリネットの独壇場が終わると, 主要主題に基づく推移部となる. ここでは長和音と短和音の交錯が絶妙なニュアンスを醸し出している (この点については後の楽章で再び触れる). 一つの山場を築いて静寂が訪れると, 再びクラリネットとファゴットによって副次旋律が悲し気に提示される (41小節). 小結尾 (57小節) は引き続き調性のはっきりしない静的なもの.

2016年3月12日土曜日

交響曲第3番 op.90 第1楽章

ブラームスの交響曲第3番, 通称「ブラ3」を取り上げる. その内容が膨大であることを考慮して, 記事は各楽章ごとに4日連続で投稿する. この曲の作曲の経緯等についてはこの記事を参照のこと.

第1楽章 Allegro con brio
ヘ長調, 6/4拍子, ソナタ形式.
6/4拍子というリズムをブラームスは好んでいたようで, 他にピアノ協奏曲第1番第1楽章やヴァイオリンソナタ第1番第1楽章でも採用している. この6/4拍子はあくまで2拍子であるということを強調しておく. 特に本作の第1主題 (3小節目からのヴァイオリン) は3拍子のようにも聞こえるが, 1, 2小節目の管楽器, あるいは3小節目からのトロンボーンの譜面は明白に2拍子であることがわかるようになっている. ちなみに, この第1主題はシューマンの交響曲第1番第2楽章に現れる旋律によく似ているが, 偶然の一致と思われる.

2016年3月11日金曜日

ブラ3の楽譜, 特に編曲版の出版について

ブラームスの交響曲第3番op.90について, その成立過程ははっきりしていない. わかっているのは, 1883年の夏にヴィースバーデンで作曲され, 9月末までには完成したということだけである. 自筆スコアはIMSLPにアップロードされており, 簡単に見ることができる. その表紙にハンス・フォン・ビューローへの献辞がブラームスの直筆で書きこまれているが, これはビューローの60歳の誕生日プレゼントとしてブラームスがこの自筆譜を贈ったためである.
初演は1883年12月2日(日)にウィーンでハンス・リヒター指揮のWPhによって行われた.その後, 1884年の1月から4月にかけてドイツ・オランダでの演奏旅行でブラームスは本作を演奏して回り,自作の普及に努めると同時に, 細かな改訂を施した. 完成稿は4月2日のブダペストでの演奏の後にジムロックに送られ,5月に出版された (スコアはN. Simrock, 1884. Plate 8454; パート譜はPlate 8455).

2016年3月10日木曜日

パガニーニの主題による変奏曲 op.35

「パガバリ」と略される, 有名なピアノ独奏曲.
ウィーンで ブラームスは当時有名だったタウジヒというピアニストと知り合った. タウジヒはリストのように超絶技巧を誇るタイプであったが, ブラームスとはなぜか気が合い, ともに連弾を楽しんだりしていた. パガニーニの主題による変奏曲は, ブラームスがタウジヒに影響され, 超絶技巧への興味のもとで作曲された. その結果, ブラームス唯一の派手な演奏効果を持つ難曲に仕上がった.

2016年3月8日火曜日

5つの歌曲 op.106

1888年から1889年にかけて作曲された5つの歌曲. 「セレナ―デ」op.106-1が特に有名である.

第1曲 セレナーデ Ständchen
若者が恋人のためにセレナーデを歌う様子が語られる. 喜ばしい気分に満ちた民謡風の旋律が特徴的.

2016年3月6日日曜日

ピアノ四重奏曲第3番 op.60

本作品を論じる際には, 常にゲーテの小説「若きウェルテルの悩み」が引用される (jawp記事). というのも, 本作の下敷きとなる嬰ハ短調のピアノ四重奏曲が書かれたのは, シューマン夫妻との出会いやロベルト・シューマンの自殺未遂から死別, アガーテ・フォン・ジーボルトとの婚約に関する一連の騒動といった出来事と同時期であり, その意味でこの曲はブラームスの「青春の結晶」と言えるからである. それを後年になってハ短調のピアノ四重奏曲として改稿して出版したのがこのop.60であり, その由来から当然であるが, 同時期の他の作品とは異なる, 若いブラームスを思わせる作品となっている.

2016年3月4日金曜日

4つのバラード op.10

初期のピアノ小品集であり, かなり地味な作風のため, ブラームスのピアノ作品の中でもかなりマイナーである. この中では第1曲が比較的知られている.

第1曲 d-moll
スコットランドの「エドワード」という詩に霊感を得て作曲された. 後にブラームスはop.75-1としてこの詩を二重唱曲にしている.

第2曲 D-dur
穏やかな主部と, 激しい中間部からなる.

第3曲 h-moll
6/8拍子であり, アウフタクトの強奏が特徴的. 音の重ね方が独特で, 古風とも現代的ともつかない聞き慣れない響きを伴う.

第4曲 H-Dur
この曲集の中では最もメロディーラインがはっきりしており, その点では聴きやすい曲である. ただし, やや単調な嫌いは否定できない.


2016年3月2日水曜日

4つの二重唱曲 op.61

ソプラノとアルトのための二重唱曲4つからなる作品集. 二重唱だけを集めたものとして, 他にop.20, op.28, op.66, op.75がある.